ゲームフリークのDNA

「夢」とか「冒険心」とか。
何年経っても、そういうものを
追いつづける集団でありたい。

株式会社ゲームフリーク

常務取締役 増田順一
『クインティ』の開発からゲームフリークに参画。今日に至るまで多くの作品のディレクターとして、シナリオや音楽も手がけている。

創業時から変わらない、
「遊びの面白さ」の追求。

創業当時は「企業」という雰囲気はまったくなく、「ゲームが好きな人間が集まったチーム」という感じでした。しかし、そこには「本当にゲームがつくりたい。多くの人々に楽しんでもらいたい!」という強い想いが確かにありました。そんな想いから『クインティ』が生まれ、その7年後には『ポケットモンスター 赤・緑』が生まれました。その頃から現在まで変わらずにこだわりつづけているのは、「遊びの面白さ」を追求するということです。

ゲームには世界観やストーリー、ビジュアルなど、さまざまなファクターがありますが、私たちはバトルの競争の遊び、タイプ相性や技など、飽きずに長い時間遊べる要素から考えることが多いです。その上で世界観やストーリー、それに最適なビジュアルを作り込みます。ゲーム性から考えるのは、創業時からある「多くの人々に楽しんでもらえるゲームを」という想いの表れだと考えています。それが、どんなにゲームづくりが進化しても創業以来ずっと変わらない私たちの「DNA」なのです。

どんなに技術が進化しようと、
「手づくり感」を忘れたくない。

そして、もうひとつのこだわりが「手づくり感」です。例えていうならば、機械だと簡単に剥けるジャガイモの皮を、手で一個一個ていねいに剥いた時、その触り心地に親しみや愛情を感じるイメージですね。今の時代、非効率で流行らないやり方かもしれません。しかし、本当に美味しいカレーをつくりたいなら、その皮を剥くという調理方法だけでなく食材自体にこだわるうちに生産地にまで興味が出てきて、どんな肥料や水を使っているのかまで知りたくなってくるものです。「いいものをつくる」ということは、「すべてを知らないとつくれない」ということだと考えています。

こういったこだわりが作品に説得力をもたらします。例えば、ゲームの中で橋をつくるとしたら、どんな橋でもつくれますが、きちんと理にかなった橋の形になっていないとリアリティに欠けて人は違和感を覚えるし、ゲームに入り込めない。だから、実物の橋の素材やデザイン、更にその土地の文化や気候まで考えを巡らせた上でつくらないといけないと思うのです。本当に大変ですが「いいものをつくる」ことをいつまでも大切にしたいと思っています。

苦境のなか、再確認できた
「ソフトの力」。

『ポケモン』の誕生以来、ゲームフリークの歩みは順調そのものに見えるかもしれませんが、実際には試練もありました。1996年に発売されて国内で大ヒットとなった『ポケットモンスター 赤・緑』が、2年後にはアメリカでも発売され、1999年の『ポケットモンスター 金・銀』が世界的に大ヒットしました。どこに行ってもポケモンのぬいぐるみが置いてあるのが当たり前のようになり、カードゲームやアニメも展開され、爆発的に広がっていきました。しかし『ポケットモンスター 金・銀』の後は、逆に「『ポケモン』は終わった」「もうダウントレンドだ」と世間から言われるようになりました。すごく苦しかったです。

ところが、2002年にゲームボーイアドバンス初のポケモンシリーズとして、『ポケットモンスター ルビー・サファイア』が、想定以上にヒットしたのです。ハードの販売台数に対するソフトの販売比率がものすごく高かった。それを知った時、「ソフトが面白ければ、ハードを新しく買ってでもユーザーはついて来てくれるんだ」と、これまで以上に「ソフトの力」を信じられるようになりました。あの経験が、今のゲームフリークの底力につながっているのだと考えています。

挑戦のDNAを体現したもの。
それが、「ギアプロジェクト」。

2010年から、ボトムアップ型の新規タイトル開発制度「ギアプロジェクト」を始動させました。きっかけは、年々大規模化する『ポケモン』プロジェクトとは別に、「こんなゲーム、面白くない?つくってみようよ」と自由にモノづくりをする機会を増やしたかったから。そこで当時、3人集まれば、ゲームをつくれるという制度を始めたのです。「ギア」とは「歯車」。一人ひとりのギアが噛み合い、会社全体を回す大きな原動力になってほしいという想いを込めて名付けました。

現在、開発一部がギアプロジェクト、開発二部が『ポケモン』シリーズを担当しています。なぜ、ギアプロジェクトを一部にしたかというと、「チャレンジ」を会社の第一に据えたかったからです。ギアプロジェクトは、チャレンジの象徴。思えば、『ポケモン』もチャレンジから生まれたものです。ここから第二、第三の『ポケモン』が出てきてほしいと願っています。また、ギアプロジェクトを経験すると、自分の職種や担当を超えた主体的な行動を取れるようになり、ゲーム全体を見る視野が備わります。結果として、大規模な『ポケモン』プロジェクトに戻った際にも良い効果をチームにもたらしてくれます。音楽に例えると、「ギアプロジェクト=好きな曲を作って演奏できるバンド活動」、「『ポケモン』プロジェクト=指揮者のもとで各人が自身のパートを最高のパフォーマンスで奏で、全体として響かせるオーケストラ」。両方の楽しさを大切にしながら、この両輪をうまく回していきたいですね。

この仕事には人生を捧げる価値がある。

海外でサイン会をしていた時に、あるお母さんから「あなたがつくったゲームのおかげで、この子の人生が豊かになったわ」と言ってもらえたことがあります。ものすごく嬉しかった。この仕事には、人生を捧げる価値があると実感しました。だからこそ、人々に夢を与えられるものをつくりたい人と一緒に働きたい。ゲームフリークのメンバーやこれから入社してくれる人には、ゲームが好きであることはもちろんのことですが、それだけではなくて世の中を広く見てほしい。お客様のことを見てほしい。私たちが本当につくりたいのはゲームそのものではなく、笑顔なのですから。

2005年頃に、企業理念をつくりました。『ポケモン』シリーズが大ヒットし、社員数が増えていく中でブレない軸が必要だと考えたからです。そこには「夢」や「勇気」、「冒険心」という言葉が並んでいます。会社としても夢を叶えるための勇気、常に冒険する心を持っていたい。直球の表現なので少し恥ずかしいですが、これが私たちの根っこです。これからも、この理念を追求しつづける集団でありたいと思っています。